我々のビジネススクールでは、学生は入学してしばらくすると全員がどこかのゼミに参加します。また、コースを修了するためには修士論文(専門職学位論文/プロジェクト研究論文)を書き上げて、審査に合格しなければなりません。世界的に見れば、実務家養成のための教育機関としての
ビジネススクールで修士論文を課すところは少数派です。しかし、自らがテーマを決め、限られた期間内である一定のルールに則って情報を収集、分析、そしてそれをまとめ上げるという作業からの経験は、皆さんが企業にもどっても必ず役に立つものです。
学生たちはゼミでの個々の研究テーマをもとに、修士論文の作成に取り組みます。研究テーマは、マーケティングを軸足に広くマネジメント全般の領域から自由に設定できます。というのも、実際のビジネスの現場においても、今やマーケティングは特定の部門の仕事ではなく、企業内のすべての人たちにとって欠かせない知識であり技能だからです。
これまでのゼミ生たちが取り組んだ分野には、マーケティング戦略策定、ブランド戦略、新製品(新サービス)開発、海外市場戦略、消費者行動分析、顧客分析、CRM(顧客関係性マネジメント)、広告やプロモーション、PRなどのマーケティング・コミュニケーション、営業戦略といったマーケティング領域のものに加え、全社戦略やオペレーション戦略、人的資源管理、M&Aとコアコンピタンスといった他領域の活動を扱ったものもあります。
修士論文を書くことで学生が手にすることができるものは、書き上げた修士論文そのものというより、試行錯誤しながら完成まで持っていった一連のプロセスから得られる貴重な経験です。それは、一生を通じて役に立つ知力です。すぐに役に立つ知識や手法といったものの多くは、時代や環境が変われば役に立たなくなります。学生の人たちには、手軽なノウハウだけではなく、射程の長いビジネス発想と技能を身につけて欲しいと思っています。